2009年12月13日日曜日

企業の研究者をめざす皆さんへ

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企業の研究者をめざす皆さんへ(丸山 宏著)

IBMの東京基礎研究所の所長としてご活躍されていた丸山 宏さんが,企業の研究者の方,あるいはそれを目指す学生へのメッセージとして書かれた本である.

トピックとしては以下のようなものがある.
・研究について
・コミュニケーショの大切さ
・研究者のキャリア
・リーダシップについて
・企業の研究所のマネジメント
・知的・契約・技術調査
・研究所の風土
・企業の研究者をめざす学生の皆さんへ

企業の研究者をターゲットとしているため,研究者としてのキャリア形成に関する話題以外にも,研究所を機能させるためのマネジメントやビジネス論についても述べられている.

印象に残った箇所を一部抜粋してみたいと思う.
p.20
CMUの金出先生とのエピソードにて
(金出先生に筆者が)では,どうやったら良い問題を選ぶセンスを見に着けることができるのでしょう?夜の食事の席でこの質問をしたら,「うーん」としばらく考えて,「研究が成功したときにどういうデモをするつもりか」を考えてみたら,と言われました.
金出先生のおっしゃるには,研究の成果をデモとして見せたとき,「これはどのように動いているのですか」と聞かれるようではまだまだで,見せたとたんに「これはいくらですか」と聞かれることが,デモの成功した証拠なのだそうです.

p.44
プレゼンテーションの仕方について
私が会社に入って受けたプレゼンテーションの研修の中で,一番頭に残っていることは,「聴衆の興味を画面ではなく,あなた自身に向けるようにしなさい」ということです.
(~略~)
特に印象に残ったのが,「説得と納得の違い」です.いくら理詰めで説得しようとしても,人は自分の言葉で納得できないと行動にはつながらないものです,

p.82
IBMのテクニカル・コミュニティのリーダーであるNick Donofrioのスピーチについて
Nickは,「Don't settle for anything」と言っています.
(~略~)
Steve Jobsのスピーチにも出てくる,現状に満足してしまったら進歩が無い,常に次の一歩を探して生きよう,という意味だ.

p.151
知的財産権について
他人の知財を知らずに使うと罰せられるが,良い知財を持っているのに社会のためにそれを役立たせない人には罰則の規定がない.

「Research that matters」という筆者の言葉,また,本の中で繰り返し引用されている金出先生の「素人発想,玄人実行」という言葉には大変感銘を受けました.

企業の研究者を目指している人だけでなく,研究職を目指す人,さらには,大学での卒業論文のために研究を行う必要がある全ての人にこの本をオススメします.