簡単に,単純に考える(羽生 善治 著)
この本では棋士の羽生善治氏がスポーツジャーナリストの二宮清純氏,元ラグビー日本代表監督の平尾誠二氏,カーネギーメロン大学教授の金出武雄氏と対談した内容が記されている.
本書内で感銘を受けた箇所,共感を持てた箇所,考え深かった箇所をいくつか紹介したいと思う.
p.12 秀才について
二宮:秀才というのは相対的な能力評価だと,私は思うんですよ.周りとの比較でものを考える.たとえば,誰かが100メートルを9秒8で走ったら,自分は9秒7で走れば勝つことができるのだと.
p.43 記憶力と創造力について
二宮:「どうも記憶が悪くて」という人がいますが,そういう人にかぎって企画力や想像力では負けないと自負している.ですが,創造力やアイデアの源は,頭の中の記憶の組み合わせから生まれてくるような気がします.
p.46 将棋には非常によくできたルールがあることについて
羽生:制約や約束事があるから,工夫しよう,打破しようという気持ちになるのでしょうね.
p.116 理想の将棋について
羽生:私の将棋の理想は,一局の将棋が初手から終わりの一手まで,一本の線のようになっていることなんです.
p.156 羽生の目標について
金出:羽生さんは「いい棋譜を残したい」といわれていますね.
p.158 有限ゲームについて
金出:ものすごく賢い宇宙人が二人でやってきて,これからチェスを指そうと言う話になる.まずは駒を並べて,先手はじっと考えた末「勝った!」,相手は「参りました」といって,終わったという・・・
p.176 将棋の盤面の評価について
金出:つまり,盤面のよさを評価する関数は滑らかでない.
p.189 研究について
金出:研究というのは,自然の世界とか摂理に対して「こういうことをやらせてほしい」「いや,それは難しいからやってくれるな」と交渉しているんですよ.それがちょうどいいところで交渉できたら,研究は成功すると.
p.229 思考法について
羽生:最善手は一つである.過去の成功体験や決断を妨げている複雑な思いから脱却する勇気を持てば,どこに次の一手を打つべきかという本質も見えてくるはずである.