切磋琢磨するアメリカの科学者たち(菅 裕明 著)
を読みました.
この本を読むきっかけについてなのですが,
先日,僕の通っている大学院の講義にて,この本の著者がゲストとして呼ばれ,1コマ分の授業を持ちました.
その中で,著者が米国の大学のシステムについてお話をしてくださったのですが,その内容がとても興味深く,もっと知りたいと思い,この本を購入しました.
著者は,岡山大学大学院を卒業後,MITにてPh.D.を取得,ニューヨーク州立バッファロー大学のAssistant Professorを経て,現在は,東京大学先端科学技術研究センターの教授をされています.そのため,著者は,日米どちらの学生,教員も経験されており,その経験をもとにこの本を記されています.
この本では,まず,米国における学生側から見た大学システム(特にPh.D.について)や教員側のシステム(新人教員のスタートアップ費用やテニュアの審査法,大学の設備など)について述べられています.
さらに,科研費(著者がライフサイエンス分野の方なので,NIH… National Institute of Healthについて詳しく)の取得方法についても記載されています.
この本の中で,著者が言いたいことのひとつに,ピアレビューというものがあります.米国のアカデミックシステムは公平な評価のもとに成り立っているということです.例えば,Ph.D.の資格適性試験は,担当の教員以外にも同じ学科の教員複数人で審査する点や,教員のテニュア審査には,同じ学科の教員以外にも外部の大学の教員を審査に加えることが挙げられます(資格適性試験は,日本でも複数人の教員が審査すると思う.また,日本にはテニュアのような資格はない).
米国では,学生の間は,少しでもよい大学院(研究室)に入るために成績は当たり前のようによい点を取り,統一試験や資格適性試験などを受け,教員になったら,限られた予算や研究室のスペースから研究を初め,テニュアを取得する・・・つまり,常に競争の中に晒され続けます.この中で勝ち抜くためには,米国の研究者は,常にモチベーションを高く維持する必要があります.(もちろん,日本の研究者のモチベーションが低いわけではない)
私が思うに,米国のシステムの良い点は,簡単に言うと,「研究者としてダメなやつはさっさと諦めて,違う仕事を探しなさい」ということです.
年を取ってから研究者にはなれないと言うわけではないけども,若いうちの方が,他の求人に関しての幅も広く,チャンスも多いだろう.米国のシステムには,「ダメ」とはっきり言うことで,アカデミックポストを早い段階で諦めさせ,別の仕事に就くチャンスを多くするという優しさがあると思います.
最後に,著者は「では,日本のアカデミックシステムをどのように改革したらよいか?」について書かれています.興味が沸いた方は是非手に取ってお読みください.