「自分が作れるものを作るな。顧客が欲しい物を作れ」
というのがあった。これを受けて製品開発について少し考えたみたのでメモをする。
その昔(~1990年)、製品と言う一般には家電や機械などの物理的なモノ、つまりハードウェア製品を指していた。この時代、 製品を作るためには、人件費はもちろん、材料費や鋳型など多額の金銭的なコストが必要だった。また、製造工程については、設計から制作段階に進んでしまうと、再度設計に戻るのは難しく、慎重を期する必要があった。この点から、この時代における製品開発は「無駄なものは作るな(コスト的に作れない)」というスタイルであった。
その後(1990年~2000年代初頭)、コンピュータとインターネットが普及し、ソフトウェア製品が多く開発された。ソフトウェアには高い再利用性があり、インターネットには低コストで情報または製品そのものを届けられるという利点がある。ハードウェア製品の時代と比べ、圧倒的に製造コストが下がったため、企業や起業家はアイデアが先に実現されることを恐れ、「とにかく作れ」という時代になった。多くの新興企業が我先にとビジネスモデルを考案し、ソフトウェアを構築し、ベンチャーキャピタルから資本を集めた。そしてインターネットバブルが起こった。ただ、ビジネスや経済学の知識を持たない起業家が、単にアイデアがあるから作ってみたというケースが多く、資本流入を管理できなかったり、顧客が必要としないソフトウェアを作ってしまうという現象が起こり、その結果、インターネットバブルは崩壊した。
現在、Lean (無駄がない, 効率的な)という言葉が流行っている。これは 無駄なソフトウェアを極力作らないための方針である。このソフトウェアは◯◯であるため顧客に使われる、という仮設を立て、顧客の反応を実験的に見てから製作段階に進む(もしくはピボットして違うものを作る)ということだ。顧客の反応を測るには、 直接顧客にヒアリングを行う方法や、顧客の行動ログを解析する方法などがある。そこで顧客は潜在的に何を求めているか?そのためにどのような機能が必要か?などを十分に考察した上で、実際にソフトウェアを作る。このように現在の製品開発のスタイルは、「無駄なものは作るな(作れるけど作らない)」と言える。
さてさて、では将来的にはどうなるかを考えてみようと思う。
未来を予測するための道具として過去の計算(機)コストとネットワークコストの話をする。昔々、コンピュータが非常に高価な時代、メインフレームという中央処理型の大規模コンピュータがあった。その後、半導体の製造コストが下がり、一般にパーソナルコンピュータが普及した。さらに、光回線の普及により、ネットワーク速度が格段に向上し、クラウド時代が訪れた。そして、現在は多くの人がスマートフォンを持っている。つまり、計算が実際に行わている場所というのは、メインフレーム(ネットのあちら)→コンピュータ(こちら、手元)→クラウド(ネットのあちら)→モバイル(こちら)と振り子のように繰り返している。このような現象は、あらゆる分野で多く起こっている。製品開発におけるスタイルは、 「無駄なものは作るな」→「とにかく作れ」→「無駄なものは作るな」と繰り返している。振り子の法則がこれにも当てはまるとすると、次は「とにかく作れ」の時代が来る。 もちろん、過去の「とにかく作れ」とは違い、一次元上に位置する「とにかく作れ!」である。現在ある顧客の反応を測るための道具がより一層研究され、このソフトウェアは顧客に必要とされるか否かが直ぐに判明するようになるだろう。つまり、この時代の新興企業は、実現できたら必ず社会に良いインパクトをもらたすと確信を持った状態から事業を始めることができる。
などど色々とまとめたり、考えてみました。近い将来のうちに、次の「とにかく作れ」のサービスバブルのようなものが来るし、既に来つつあるんでしょうねー。その中からAmazonやGoogle に匹敵する企業が現れると楽しいなーと個人的には思います。みなさんはどのようにお考えでしょうか?